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ECサイトとEC事業の違い|「作っただけ」で売れない中小メーカーが越える5つの分かれ目

公開日 更新日 執筆 高橋 竜也(合同会社ウィル 代表)

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ECサイトを作ったのに、売上が動かない。広告もSNSも手が回らず、何を直せばいいかもわからない。こうした悩みを持つ中小メーカーは少なくありません。原因の多くは、努力や予算の不足ではなく、ECを「事業」として動かす設計がないことです。本記事では、ECサイトとEC事業を分ける5つの要素と、1つずつ整える進め方を解説します。

こんな方におすすめの記事です

  • ECサイトはあるが、売上が伸びずに止まっている
  • 制作会社に依頼したが納品後に何も変化がなかった
  • 何を改善すればECが売れるようになるか分からない
  • 担当者がおらずEC運用が止まりがちになっている
  • EC事業を本格的に始めたいが何から手をつければよいか分からない

この記事でわかること

  • EC事業とECサイトの本質的な違いと定義
  • EC事業を機能させるために必要な5つの構造要素
  • サイトだけある状態に陥る中小メーカーの典型パターン
  • 放置した場合に起きる経営リスク
  • 5つの要素を1つずつ整えるための4ステップ

EC事業は「作る」ものではなく「設計して動かす」もの

集客・接客・顧客データ・運用・改善の5つが設計され、続けて動いていて初めて、ECは事業になります。1つでも欠けると売上は安定しません。中小企業のEC構築の全体像は、こちらも参考にしてください。

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  • EC事業には集客・接客・データ・運用・改善の5要素が要る
  • 1つでも欠けると売上は安定しにくい
  • 5つを一度に整えず、欠けているものから進める

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EC事業とは何か:サイトの有無ではなく売上を生む構造があるかどうか

ECサイトは商品を売るための道具で、EC事業はその道具で売上を生み続ける仕組みです。道具があっても、使い方が設計されていなければ売上は生まれません。サイトを作っただけでEC事業を始めたと考えてしまう会社は少なくありません。

「EC事業がある」の定義:集客・接客・リピートが設計されている状態

EC事業がある状態とは、集客・接客・リピートの3つの流れが設計され、続けて動いている状態です。集客は、誰がどこからサイトに来るか。接客は、来た人に商品の価値をどう伝えて購入につなげるか。リピートは、一度買った人にまた買ってもらう仕組みです。サイトはあっても、このどれかが設計されていない会社が多くあります。

  • EC事業とは集客・接客・リピートが設計されている状態
  • 集客は「誰がどこから来るか」を決めること
  • 接客は「来た人に価値を伝える」こと
  • リピートは「また買ってもらう」仕組みを持つこと

なぜ「サイトがある=EC事業がある」という誤解が生まれるのか

誤解が生まれる理由の一つは、制作の依頼の仕方にあります。制作会社の仕事はサイトを作って納品することで、納品後の運用は範囲の外であることが多いです。発注した側は「サイトが完成した=EC事業が始まった」と考えがちですが、ここにずれがあります。動かす設計は、発注者が自ら持つか、運用まで担う会社に頼む必要があります。EC月商が伸びない会社に共通する原因は、こちらも参考にしてください。

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  • サイトの完成はEC事業の始まりではない
  • 制作の依頼に、運用の設計が含まれていないことが多い
  • 作ることと動かすことを分けて考える

サイトとEC事業の差を生む5つの要素

差を生むのは、やる気や予算ではなく、5つの要素がそろっているかどうかです。1つずつ確かめると、自社に何が欠けていて、何から整えるべきかが見えてきます。

要素① 集客設計:誰がどこからサイトに来るかが意図的に設計されているか

集客設計とは、新しいお客様がどの経路でサイトに来るかを決め、その経路を続けて動かすことです。設計がないと、流入は既存のお客様や偶然の検索に限られ、売上の伸びに限りが出ます。SNS・SEO(検索エンジンからの集客)・広告のうち、少なくとも1つが続けて動いているかを確かめましょう。

  • 設計がないと、流入は既存客と偶然の検索に限られる
  • SNS・SEO・広告のうち1つが続いて動いているかを見る
  • 毎月、新しい訪問者が来る経路があるかが最初の確認点

要素② 接客設計:訪れた人に商品の価値が伝わるLPや特集ページが存在するか

接客設計とは、サイトに来た人が商品の価値を理解し、買いたくなる流れをつくることです。商品名・価格・短い説明だけのページでは、なぜこの商品を選ぶのかが伝わりません。購入率(CVR:訪問者のうち購入した人の割合)が1%なら、1,000人が来ても購入は10件です。2%に上がれば、同じ訪問数で購入は2倍になります。

  • 商品名と価格だけのページでは価値が伝わらない
  • LPや特集ページで、選ぶ理由を見せる
  • 購入率が1%から2%になれば、購入は2倍になる

要素③ 顧客データ設計:購入者の情報が蓄積され次の施策に使えるかどうか

顧客データ設計とは、購入者のメールアドレスや購入履歴をため、再購入の案内や商品づくりに使える状態にすることです。設計がないと、購入した時点でお客様との接点が切れます。一般に、新しいお客様を獲得するほうが、既存のお客様に再び買ってもらうより費用がかかります。リピートが増えないままだと、新規の集客に費用をかけ続けることになります。

  • 顧客データがないと、購入後に接点が切れる
  • 購入履歴があれば、次の提案や季節の案内に使える
  • ためた顧客データは事業の資産になる

リピート率が上がらない会社に共通する「データなし・メルマガなし・LINEなし」構造

売上が伸び悩むECでは、リピートが少ないことがよくあります。購入者のデータがたまっていない、メールマガジンがない、LINE公式アカウントがない、が重なっている状態です。同じ集客でも、再購入が増えれば売上は変わります。

  • 伸び悩むECは、リピートが少ないことが多い
  • データ・メルマガ・LINEのどれもない状態を避ける
  • 再購入が増えれば、同じ集客でも売上が変わる

要素④ 運用設計:担当者がいなくても月次で動き続ける仕組みがあるか

運用設計とは、特定の担当者に頼らず、ECの運用が毎月続く仕組みを持つことです。中小メーカーでは、社長や事務・店舗のスタッフが兼務していることがほとんどです。本業が忙しくなると、SNSの更新が止まり、商品ページも古いままになります。月ごとの投稿予定、自動のステップメール、月1回の数字の確認を先に決めておけば、誰が担当しても続けられます。

  • 兼務の担当では、本業が忙しいと更新が止まりやすい
  • 月ごとの投稿予定があれば、担当が変わっても続く
  • 自動のステップメールは、設定後は人手なしで動く
  • 月1回の数字の確認が、改善を回す最低限の仕組み

専任の担当がいないこと自体は問題ではありません。問題は、誰が数字を見て、誰が次の一手を決めるかが決まっていないことです。数字を見る人・更新する人・判断する人を分けましょう。そのうえで、週1回の更新と月1回の振り返りの時間を、先に予定に入れておきます。

  • 数字を見る人・更新する人・判断する人を分ける
  • 週1回の更新の時間を先に予定に入れる
  • 月1回の振り返りの時間を固定する

更新が3ヶ月で止まる会社と止まらない会社、何が違うのか

続く会社と止まる会社の違いは、運用の仕組みを先に決めているかどうかです。止まる会社は、やる気のあるうちに始め、忙しくなると止まります。続く会社は、月ごとの投稿テーマの予定表と、誰が作っても同じ品質になる簡単なひな形を持っています。

  • 仕組みなく始めると、忙しくなった時点で止まる
  • 月ごとの投稿テーマの予定表を先につくる
  • 誰でも同じ品質で作れるひな形を用意する

要素⑤ 改善設計:数字を見て仮説を立て翌月に反映するサイクルがあるか

改善設計とは、訪問者数・購入率・客単価・リピート率の4つの数字を毎月確かめ、翌月の施策に反映することです。訪問者が増えたのに購入率が低ければ、接客の見直しが先です。リピート率が下がっていれば、メールマガジンの中身を見直します。売上だけでなく、利益に近い数字も一緒に見ておきましょう。

  • 訪問者数・購入率・客単価・リピート率の4つを毎月見る
  • 訪問者が増えても購入率が低ければ、接客を見直す
  • リピート率が下がれば、メールマガジンを見直す
  • 売上だけでなく、利益に近い数字も見る

よくある3つのパターン:「サイトだけある会社」で起きていること

5つの要素が欠けたままECを始めると、どうなるのか。よくある3つのパターンを挙げます。自社に当てはまるものがあれば、どの要素が欠けているかを確かめるヒントにしてください。

ケース① 制作費150万円を払ったが納品後に何も変わらなかった

制作会社にECサイトを依頼し、デザイン・商品登録・決済の設定まで整えて納品された。しかし3か月たっても売上は変わらない。「あとは運用してください」と言われたが、何をすればいいかわからない。欠けているのは集客・接客・運用の3つです。「動かす設計」が、発注の範囲に入っていなかったことが原因です。

  • 集客の設計がなければ、サイトが完成しても人は来ない
  • このケースでは集客・接客・運用が欠けている
  • 発注時に、運用の設計まで含めるかを決めておく

ケース② SNSを始めたが投稿が散発的になり気づけば3ヶ月止まっていた

「まずSNSから」とInstagramを始め、最初の2週間は毎日投稿できた。仕事が忙しくなると頻度が落ち、3か月目にはほぼ止まった。フォロワーも、サイトへの流入もほとんど増えなかった。欠けているのは運用設計です。投稿テーマの予定表も、見た目のルールもないまま、個人の頑張りで始めたことが原因です。

  • 思いつきで始めたSNSは、忙しくなると止まりやすい
  • 投稿テーマの予定表がないと、ネタが続かない
  • このケースで欠けているのは運用設計

ケース③ 月商が10万〜20万円で止まり何を改善すればいいかわからない

ECサイトはあり、商品もある程度売れている。ただ、売上が1年以上変わらず、何を変えればいいか判断できない。欠けているのは改善設計です。訪問者数・購入率・リピート率を見て初めて、集客・接客・リピートのどこに問題があるかがわかります。

  • 売上が長く変わらないなら、改善設計を疑う
  • 数字がなければ、問題の場所がわからない
  • 見当違いの施策に費用を使わないために、まず数字を見る

放置するとどうなるか:「サイトだけある状態」が固定化する経営リスク

放っておくと、売上が伸びないだけでなく、時間とともに経営の選択肢が狭まります。先送りが続くほど、取り戻すのにかかる費用は大きくなります。

EC売上がゼロに近い状態で卸・実店舗売上が落ちたとき逃げ場がない

卸や実店舗に頼った売り方では、ECの売上がほぼないと、外部の変化に弱くなります。たとえば年商5,000万円の会社で、主な卸先が仕入れを20〜30%減らすと、年間1,000万〜1,500万円の売上が減る計算です。ECに一定の売上があれば、その一部を補えます。販路を分けることは、攻めだけでなく守りの意味もあります。

  • 卸先の仕入れが減ると、大きな売上が一度に消える
  • ECの売上がほぼなければ、補う手段がない
  • 販路を分けることは、攻めと守りの両方になる

競合がEC事業を育て始めるとブランドとして比較される土俵に立てなくなる

同じ分野の競合がECを育て始めると、検索結果やSNSでの露出の差が広がります。ブランドの認知は短期間では取り戻せません。競合が何年も続けたあとに追いかけるには、同じかそれ以上の時間と費用がかかります。動かないことは、現状維持ではなく、相対的な後退です。

  • 競合がECを育てると、検索やSNSでの露出に差がつく
  • ブランドの認知は短期間では取り戻せない
  • 動かないことは、相対的な後退になる

EC事業への移行:5つの要素を1つずつ整える進め方

5つを一度に整えようとすると、手が分散して何も仕上がりません。自社に何が欠けているかを確かめ、優先度の高いものから1つずつ積み上げましょう。

ステップ1 現状診断:5つの要素のうち自社に何があって何がないかを確認する

まず、5つの要素について自社の現状を確かめます。見るのは「設計されているか」「続けて動いているか」の2点です。毎月新しい訪問者が来る経路はあるか。LPや特集ページはあるか。購入者のリストを再購入の案内に使えるか。担当が変わっても続く毎月の流れはあるか。月に一度は数字を見て施策を変えているか。YESの数を数えるだけで、現状がはっきりします。

  • 「設計されているか」「続いて動いているか」で確かめる
  • 5つの問いにYESがいくつあるかを数える
  • 欠けている要素が、最初に取り組む候補になる

ステップ2 集客起点の決定:SNS・SEO・広告のうち1つを選んで3ヶ月動かす

集客が欠けているなら、起点を1つ選んで3か月集中して動かします。食品・雑貨・アパレルなど見た目で伝わる商品はSNS、比べて選ばれる商品や専門性の高い商品はSEOが向いています。3つを同時に始めると、どれも中途半端になります。1つで数字が出てから、次に広げましょう。

  • SNS・SEO・広告から、商品に合う1つを選ぶ
  • 見た目で伝わる商品はSNS、比べて選ばれる商品はSEO
  • 1つを3か月続けてから、次に広げる

ステップ3 接客整備:商品ページとLPを「価値が伝わる」水準に引き上げる

集客が動き始めたら、接客も整えます。主力商品のページを「誰に・何がよいのか・なぜこの商品か」が伝わる内容にします。写真は5〜8枚、説明は使う場面・素材・こだわり・よくある質問を含めて500字以上が目安です。LPは、売れている商品か利益率の高い商品に絞って1本から始めましょう。

  • 商品ページは写真5〜8枚・説明500字以上を目安にする
  • 「誰に・何がよいか・なぜこの商品か」を書く
  • LPは主力か利益率の高い商品で1本から作る

ステップ4 データ取得の仕組み化:購入後のステップメールとリスト収集を設定する

集客と接客が整ってきたら、顧客データをためる仕組みを作ります。購入時にメールアドレスを集め、購入の3日後・7日後・30日後に送るステップメールを設定します。多くのECの仕組みには自動メールの機能があり、文面と送る時期を決めれば設定できます。3日後は使い方のヒント、7日後は使い心地の確認、30日後は関連商品の案内が基本の流れです。

  • 購入後3日・7日・30日のステップメールを最初に設定する
  • 3日後は使い方、7日後は確認、30日後は関連商品の案内
  • ためた顧客リストが、メルマガやLINEの土台になる

よくある質問

EC事業の進め方について、よくいただく質問をまとめました。

EC事業の5要素を全部整えないと始められませんか

同時に整える必要はありません。いちばん欠けているものを見極め、そこから1つずつ進めます。集客がないなら集客から、集客はあるのに購入率が低いなら接客から、売れているのにリピートが少ないなら顧客データからです。

  • 5つを同時に整える必要はない
  • 集客がないなら集客、購入率が低いなら接客から
  • リピートが少ないなら顧客データから始める

専任担当者がいない状態でEC事業設計はできますか

できます。人が頑張り続ける運用ではなく、仕組みで動く形を前提にします。毎月の投稿予定・ステップメールの自動化・月1回の数字の確認を先に決めれば、兼務でも続けやすくなります。最初の設計だけ外部に頼み、仕組みが動き始めてから社内に移す進め方もあります。

  • 人の頑張りではなく、仕組みで動く形を前提にする
  • 投稿予定・自動メール・数字の確認を先に決める
  • 最初の設計だけ外部に頼む方法もある

初期投資を抑えて始めることはできますか

できます。ただし、安く作ることが目的になると失敗しやすくなります。大切なのは、最初の完成度より、公開後に改善が回ることです。制作の費用と改善の費用を分けて考え、小さく始めて、数字を見ながら必要な投資を増やしていきましょう。

  • 一度の完成度より、続けられる形を優先する
  • 制作の費用と改善の費用を分けて考える
  • 数字を見ながら、必要な投資を段階的に増やす

ツール選びはどれくらい重要ですか

ツールはあとから変えられますが、役割と見る数字が決まっていないと、どのツールでも運用は止まります。先に、ECの役割、毎月見る数字、担当と時間を決めましょう。そのうえで、自社の商品数や運用の手間に合うものを選ぶと迷いにくくなります。

  • ツールより先に、役割と見る数字を決める
  • 商品数と運用の手間に合うものを選ぶ
  • ツールを変えても、仕組みがなければ止まる

まとめ:EC事業は「作る」ものではなく「設計して動かす」ものである

「ECサイトがある」と「EC事業がある」は別の状態です。集客・接客・顧客データ・運用・改善の5つが設計され、続けて動いて初めて、ECは事業になります。5つを一度に整える必要はありません。まず欠けているものを確かめ、優先度の高いものから1つずつ積み上げましょう。中小企業のEC構築の全体像は、こちらもあわせてご覧ください。

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今日から始められる確認ポイント

まず、5つの要素のうちYESと言えるものがいくつあるかを数えてみてください。欠けているものが見えれば、最初の一手が決まります。

  • 5つの要素のうちYESがいくつあるかを数える
  • いちばん欠けている要素を1つ決める
  • 集客がないなら、1つの施策を3か月続ける
  • 購入後のステップメール3通を設定する

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この記事の著者

高橋 竜也|合同会社ウィル 代表
BtoBマーケティングの現場経験10年以上、Web制作の現場経験7年以上。SaaS企業でリード獲得施策・MA運用・インサイドセールスのマネジメントを経験。福岡・博多を拠点に、BtoB中小企業の営業基盤づくりを支援。